| すべてのひとの美術の出発点は、その作品が如何に心を揺さぶるかにあると思います。難しい専門用語を使った難解な概念の説明は、本来の目的である「楽しみ」を得ることの助けになりません。美術はみなさんの身近にあるものであり、人として生きていくために必要なエネルギーなのです。
長い時を経た美術品は、「今」という時間、「ここ」という場所に存在する必然性を持っています。その存在は力強く、しっかりと我々をつかまえてくれるようです。変化のめまぐるしい現代社会において、不変的で普遍的な美術品の存在意義(レーゾン・デートル)は人の心と暮らしを豊かに包みこむものです。一方、新しく生まれてくる美術品は、とても清潔で迷いのない赤ん坊のようです。その無垢な輝きは、無限な可能性を秘め、時に見るものを魅了し惑わせることさえあります。ガラスのように脆く、儚い、バランスの中で、自らの存在を証明しようとする姿は、我々の生活や生き方の刺激と希望を与えます。
古いものと新しいもの。
その組み合わせにセオリーやマニュアルはありません。
作品として本来持ちうる力を見極めながら、さまざまな挑戦と冒険によってかたち作られていくのです。なにもかもが自由な世界の爽快さと難しさを十分に堪能したならば、そこには新たな自分と新しい美しさが生まれていることでしょう。作品を知ることは自分を知ることでもあり、新たな組み合わせを見つけることは新しい自分を発見することにつながっているのですから。そこには専門的な技術や特別な形式はありません。ただ楽しむことがルールなのです。
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