絵画・立体
絵画・立体











 

 

水谷興志



 
    

<清淵>




水谷興志の作品について

水谷興奮の作品を眺めていると、音もなく、とてもささやかな風を感じる瞬間があります。
この絵の水面には、水の流れや光の反射といった可視的な表現とともに、静謐さと透明感が漂っているようです。そして山々には雄大さと存在感が、木々には閑寂さと生命力が、まるで作品の裏側に隠しこまれたように描かれています。
本来の日本画という領域を大きく越えていく表現が多い中、水谷興志はあくまでも日本画そのもののにこだわり続けます。一枚の薄い紙の奥底にある絵画本来の魅力を引き出そうとしているのです。画面に落とし込まれていく一筆一筆には、ありふれた風景のワンシーンを切り取るためではなく、目に見えない空気の流れや吹き込んでくる風の冷たさまでも感じさせる業があるのです。

日本的なるもの −水谷興志−

桜が咲いている。
春の眠たげな大気と新芽を吹き出している木立の中に一際艶やかな姿を際立たせている。満開の桜はそれ自体の美しさとそれを取り巻く空気との対比で一層美しく見えるのである。私はおもむろにスケッチブックを取り出して写生をはじめる。
鉛筆で風景全体の構図をデッサンし、水彩絵具と色鉛筆を使って描いていく。桜と周りの空間との関係を描写しながら、光と影の調子でその存在を表現していく。目の前に見えるモノとして、桜の淡いピンクの色のフォルムも風景全体の中の部分として把えていく。そういう風に今までは、学生時代に受けた美術教育の延長で写生をして来たのである。しかし、なぜか次第にその表現に不満を感じてくる。何か物足りないのである。
桜のある風景ではなく、桜そのものを描きたいという欲求が沸いてくるのである。スケッチブックを放り出して、暫し桜の樹の下で満開の花を仰ぎて考える。
桜は牡丹や菖蒲の花と違い、小さな花が集まって一つの大きな花となる。桜の樹自体が大きな花なのである。遠くから見ると、五弁や八重の小さな花びらは、ほとんど淡いピンクの色の塊としか見えない。現実の桜はそう見えるのだが、絵にした時、その小さな花が描かれていないとなぜか桜のイメージになってくれないのである。
そこで桜の小枝を丹念に写生してみる。枝についた花は横を向いたり後ろ向きであったり、様々な形をして咲いている。しかし確かに見えたとおりに描いているのだが、逆に実感としての「桜」のリアリティに欠けるのである。私の想う「桜」のイメージと現実の桜の樹とどう結びつけて描いていけばよいのか再び考えるのである。
花を愛でる日本人の感性の象徴である桜は、古くから多くの絵画文芸作品の題材として扱われて来た。梅とは違い、桜は樹同士で花の合図でも送り合っているかのようにその地域で時を同じくして一斉に咲き誇る姿は実に不可思議である。
桜の咲いている期間は一種不安定なソワソワと落ち着かない気持ちになり、散ってしまうまでに一目仰ぎ見てみたいという感情に急き立てられる。そういう日本人の桜に対する想いと桜の樹の下で人々が集い、歌い踊り、自然に溶け込もうとする風習は、絵画表現にも影響を与え、日本絵画において独特の表現をする。
桜を描いた古典作品を見てみると、花はほとんど正面を向き(日本がまだ生活に慎ましさがあった頃の家の障子の破れに貼った桜の花の透し絵の形である)に描かれている。それが様式的に版で押したように集団として描かれているのだが、不思議と違和感を感じさせない。現実にはありえないのだが、それこそあの「桜」の華麗な姿に近いのである。





水谷興志

<ながせ>

水谷興志

<吉野>

水谷興志

<筑後川>



水谷興志


<春時雨>



水谷興志


<冬・水仙>



水谷興志


<綾羅木にて>



略歴

1952 三重県に生まれる
1976 愛知県立芸術大学大学院日本画科修了
1975〜85 創画会展出品 (以後本展六回 春季展十一回)
1984 京都市立芸術大学日本画模写研究室に内地留学
1985〜1996 香流会展出品 (松屋銀座 東京)
1985 愛松会展出品 (銀座松坂屋 東京, 松坂屋本店 名古屋)
1986〜1994 知の会展出品 (有楽町アート・フォーラム 東京)
1986 愛知芸大日本画部師弟展出品 (松坂屋本店 名古屋)
1988 院展出品 (以後毎回入選)
東京セントラル美術館日本画大賞展出品・佳作賞受賞
方の会展出品 (名鉄百貨店 名古屋, 岩田屋百貨店 福岡, 池袋西武 東京)
1990 春の院展出品 (以後毎回入選)
個展 (銀座アートセンター 東京)
1990〜1994 有杜の会展出品 (有楽町アート・フォーラム 東京)
1993 個展 (岩田屋百貨店 福岡)
美しき東日本展 (東京ステーションギャラリー 東京)
1993,1995 六甲会展出品 (阪神百貨店 大阪)
1994 東京セントラル美術館日本画大賞展出品佳作賞受賞 (招待出品)
谷尾美術館大賞展奨励賞受賞
1995 二人展 (池袋西武 東京)
1996 International Art Fair - Singapore- (平野古陶軒)
1997 個展 (アート・ミュージアム・ギンザ 東京 主催平野古陶軒) 
1999 個展 (松坂屋本店 名古屋, 銀座松坂屋 東京)

2000

大宰府天満宮「平成の余香帖」揮毫奉納
2001 International Asian Art Fair -New York- (平野古陶軒)
  個展 (信州上田)
個展 (福岡三越 福岡)
2002 個展 (日本橋三越 東京)
2003 Four Seasons Fine Arts
-Bellewvue, Honolulu, Sacramento, - (ギャラリー真玄堂)
  個展 (津松菱 三重)
  刑政 (財)矯正協会発行 挿絵
2005 個展 (福岡三越 福岡)
2006 個展 (日本橋三越 東京)
2007 個展 (そごう広島 広島)
2008 アートフェア東京 (ギャラリー真玄堂)
  個展 (八尾西武 大阪)


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古川美術館
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