□染付
中国・元において染付磁器の技術・様式の確立は、ロンドン大学付属デビッド・ファンデーションの青花龍水図象耳大瓶に至正11年(1351年)の年紀があることから、14世紀中頃には完成されていたと考えられる。その後、染付磁器の発展とともに日本、朝鮮、中央アジア各地に輸出されることにより、ベトナムはその技術・様式を受容していった。
ベトナムのどこで染付磁器の焼成がはじまったかは窯址がわかっていないだけに何らの根拠もえられない。元の染付磁器の盛行が14世紀中頃であり、黎朝や莫年の年紀をもつ染付磁器の存在から、ベトナムの染付磁器は14世紀後半頃にはじまったと考えられる。途中、15世紀前半に上絵付けによる五彩が施されるようになり、その後17世紀後半まで焼造は続けられていく。
景徳鎮や龍泉窯の青磁を模倣し、鉄絵の彩描・製陶技術を有していた土壌から、染付磁器への変遷は比較的自然に行われたと思われる。
当初は元染付磁器の様式を丁寧に模倣することからはじまり、のちに明初の器形に元様式の文様を施すといった変遷を辿りながら、15世紀に入ると徐々にベトナム独特の文様・筆致・器形を生み出すようになり、壮大な気宇を誇る様式を完成させていった。そこには2つの様式が生まれ、大越国黎朝の衰退とともに17世紀後半に終息していった。
染付磁器に用いられるた胎土は、それ以前に焼成されていた青磁・白磁・鉄絵とほぼ同じくした淡黄白色の半磁胎であり、良質なカオリンが産出しなかったため、全体に白化粧が施され透明釉が掛けられている。つくりが全体に厚く、元・明染付に比べ柔らかい印象と、高台裏に鉄絵具によって刷毛目あるいは塗りつぶされていることがベトナム染付磁器の特徴ともされる。
文様ははじめ、主文様に龍、その周辺に宝相華唐草、蔓唐草や蓮弁文を配するなど元様式を規範とするが、のちに躍動感に満ちた筆致が用いられるようになり、それに合わせるように龍や鳳凰から鹿や水牛・翡翠・鯰といった独自の主文様の移り変わっていく。同時にそれを飾った従文様も濃淡を表した軽快なリズムで描かれ、その様式は時代を追うごとに民族色を濃くしていった。
その一方で元様式をあくまで踏襲していった様式が存在する。その特徴としては、主文様を貼花技法で龍文を表し、従文様には蓮弁文が多用され、灰青色をおびた染付の透明釉が釉裏のコバルトをにじませて流れるような景色の「絞手」になっている。また銘文を伴っているものもある。
器形は一般に広口壷・梅瓶・玉壷春瓶・鉢などが多く、ケンデー形水注・双鳥形水注・合子といった特色のあるものも16世紀にはいってつくられるようになった。
□赤絵
現状している15世紀前半の五彩磁器として五彩山水文筆筥があるが、これは染付を使い白抜きで文様をあらわしたのち緑・赤を施すことによって鮮やかな色彩を表現することに成功している。中国では行われなかった、この技法により五彩技法は確立され、釉も染付で用いられていた青みがかったものから、より呈色を出すために黄白色の上絵付素地へと推移していく。器形は染付とほぼ同じくするが、合子・ケンデー形水注は珍しく、五彩象形水注(ジャカルタ国立博物館)といったものもある。また金彩が点じられたものも存在する。
|

<安南染付合子>

<安南染付水注>

<紅安南鳥文皿>
|