高麗陶磁

10世紀頃より中国・越州窯の影響を受けながら、12世紀には「翡色青磁」なる高麗独自の青磁をつくりだすようになる。最も注目されるのが、素地の表面を刻み、白土・赤土などをその部分に嵌め込んで文様をあらわし、最後に青磁釉を掛け焼成した象嵌青磁である。その優美さと貴高さを持ち合わせた青磁は高麗でのみつくられ、中国・日本など他の地域では見られない独創性を発揮した。その他、釉下に鉄絵で文様を描いた青磁鉄絵、銅系の彩料を用いて紅彩を施した青磁辰砂など様々な装飾技法が生み出され優品を産していく。しかし、高麗も末期となると作風も変化し、時代の終わりとともに高麗青磁は粉青沙器へと移り変わる。

翡色青磁
12世紀前半頃の高麗青磁の深く澄んだ釉色のことを言う。中国・宋の「宣和奉使高麗図経」の中で、高麗の人々が青磁の釉色を翡色青磁と呼んでいるとの記述がある。越州窯「秘色青磁」に対して、あるいは玉の意を指し「翡色青磁」と呼んだのではないかと考えられるが、高麗青磁の幽玄優美な姿をうまく表現している。

時代背景
918年、王建が朝鮮半島に立てた王朝。都を開城に定め、仏教を国教とし、官僚制度を敷いた。国勢は遼・金・元の相次ぐ進行により、一時的な安定期を除いて脅かされることが多く、1392年、ついに李成桂によって滅ぼされ470余年の王朝は幕を閉じた。美術に関しては、新羅からの文化を引継ぎ中国・北宋・遼からの影響を受けながら、洗練された美意識を独自に確立し、高貴かつ崇高な高麗美術を完成させる

加飾技法
9~10世紀頃中国の越州窯の影響を受けはじまった高麗青磁は、翡色と呼ばれる青磁とともに、さまざま加飾技法も生み出していった。なかでも象嵌青磁に見られる絵画的表現は、それまでの中国には見られなかったもので、艶やかで奥深い青磁の美しさと相まって、陶磁器に高麗独自の優美さをもたせています。 象嵌青磁の技法の他、 もともと中国でも行われていた陰刻、陽刻や印花、そして非常に珍しい金彩青磁などの装飾も施されました。

参考文献
(和文)
陶磁体系29 高麗の青磁 平凡社
世界陶磁全集18 高麗 小学館

収蔵美術館
東京国立博物館
京都国立博物館
大阪市立東洋陶磁美術館
高麗美術館
韓国国立中央博物館(韓国)
韓国国立慶州博物館(韓国)
Leeum, サムソン美術館(韓国)
湖厳美術館(韓国)
Metropolitan Museum of Art (New York, U.S.A)
大英美術館(London, U.K.)
ギメ美術館(Paris, FRANCE)