青花とは
白磁の釉下にコバルトで絵付けを施した磁器のことで、青花とは中国における染付の呼称です。元代に始められた技法で、当時、西方ペルシャより輸入されたコバルトを用い、濃厚な青で複雑な文様をあらわしたものが多く、重厚な器形と調和し力感に満ちています。きめが細かく純白に近い磁器質の胎土と、釉下に施された青色の文様は、長期間使用しても退色・剥落することがありませんでした。明代に入ると景徳鎮に官窯が設けられ、明初の永楽・宣徳年間には様式・技術ともに洗練され、整美な作風を誇り、その後も長きにわたり生産が続けられました。
青花の起源
コバルトの使用は紀元前7世紀にはすでに見られ、一方で釉下への彩絵技法も唐以前の遺物から確認されています。つまり、青花の技法を生み出す土壌は早い段階から形成されていたにもかかわらず、その登場は元代に至るまで確認されていません。現在、デビット財団(英)が所蔵する青花雲龍文双耳瓶は至正11年(1351年)の紀年を持ちますが、この瓶がすでに元様式の完成されたかたちであることから、青花の起源が1351年以前のどの時期にさかのぼれるかが研究の対象となっています。1331年以後に沈没したとされる韓国新安沖の沈没船から青花磁器は発見されておらず、上海市青浦県にある元末・任氏の墓跡からも青白磁は大量に見つかるものの青花は存在しません。1349年に著された『島夷志略』(汪大淵)は1330~1339年の南洋諸国航行を記したものですが、その中に貿易品として「青白花磁器」という記述があるなど、さまざまな理由から現段階では1330年代に青花磁器の様式が確立してきたと考えるのが有力です。
元代の青花
現時点の研究では染付の起源とされ、異民族統治のもと飛躍的な装飾技法の発展を遂げました。主な輸出先であったイスラム圏の影響を受けながら、さまざまな器形や文様を生み出し、ひとつの様式をつくり上げています。
明代の青花
御器廠が置かれた景徳鎮を中心に、元代に発展した青花磁をさらに洗練させた永楽・宣徳期、青花の新たな展開ともいえる成化期、そして民窯の力が増した嘉靖期など、明代はいくつかの時期に分けられ、その様式の特徴や背景はさまざまです。
明末清初の青花
国の乱れとともに崩れていった官窯体系も、清朝に入るとそれまでの技術を改めて集大成させ、「精磁」と呼ばれるほど精緻を極めた厳しい磁器を生み出していきました。しかし色釉がその生産の中心となるにつれ、青花磁の生産は徐々に民窯へと移っていくこととなります。
青花の顔料
一般にコバルトと呼ばれる顔料は、鉄・マンガン・珪石などの不純物を多く含んでおり、コバルトの成分はむしろ低いものです。これらの不純物の成分比率により顔料としての特徴があらわれ、それぞれの産出地をある程度特定することができます。
- 回回青:元
- 蘇麻離青:永楽・宣徳・成化
- 陂塘青(平等青):成化・弘治・正徳
- 無名子(石子青):正徳・嘉靖
- 回青(回回青):正徳・嘉靖・隆慶・萬暦
- 浙青:萬暦
民窯
磁都と称された景徳鎮には官窯と民窯とが存在し、それぞれの役割のもとでさまざまな青花磁がつくられていました。民窯は技術的に遅れをとっていた分、自由な活動が許されており、中国本土より遠くアフリカまでの広い範囲で需要を満たしていたことが分かっています。
釉裏紅
青花と同様に白磁の釉下に絵付けを施した磁器ですが、青花がコバルトを用いるのに対し、釉裏紅は銅紅を用いて文様をあらわします。元代にその技術は確立されていましたが、透明釉が用いられることはなく、青白釉を施していたため微妙に青みを帯びた肌になっています。また文様をあらわすというよりも文様を引き立てる色として用いられ、白抜きや地塗りとして使われることが多くありました。これが洪武期に入ると透明釉が施されるようになり、一部塗り込んだものも見られるものの、文様を線描であらわすように変化していきます。釉裏紅は技術的に非常に高度な温度調整が必要となるため、紅色はやや淡く、少し灰色がかったものも多く、貫入が入る場合もあります。文様は花卉文が多く、牡丹や蓮花、扁菊の唐草文などが主に使われました。洪武期は釉裏紅が最も隆盛した時代であり、その後は技術的な向上を得たものの単調な構図へと変化していきます。宣徳以後は次第に技術が失われ、200年を経て康熙になって復興されるまで、しばらくの間その姿を隠すこととなりました。
代表的な作品例
元代の青花牡丹唐草文壷、明・宣徳の青花牡丹唐草文鉢、明・正徳の青花龍文皿、清・雍正の青花白抜龍文碗など、時代ごとに様式の異なる作品が知られています。
- 東京国立博物館
- 京都国立博物館
- 出光美術館
- 大阪市立東洋陶磁美術館
- 白鶴美術館
- 大和文華館
- 戸栗美術館
- 松岡美術館
- 『世界陶磁全集11 元・明』河出書房
- 『陶磁体系 元明の染付41・42』小学館
- 『世界陶磁全集14 明』
- 『故宮蔵瓷 明彩瓷1・2』故宮博物院
- 『中近東の中国陶磁』三杉隆敏、学芸書林
